吃音・治療

吃音の克服体験記:背中を押してくれた友達

高二の放課後。
体育館で女子バスケットボールのクラス対抗戦がある。

空手同好会の我々は、
せっかく女子の対抗戦があるのだから応援しに行こう、と
すんなり決まった。

体育館に行くと、女子がどやどやと入ってくる。
試合がはじまる。

「おい、佐藤」

「うん、何?」

「お前、この女子の中で、誰が一番かわいいと思う?」

えっ? いったい、なんやねん。
いきなりストレートなこと聞いてくるなー。
まあ、クラスが違うから、うちのクラスの女子のこと聞きたいんやな。

「そやなあ。今、ボール投げて走ってる・・・あの背の高い子かな」

「どれどれ。あーなるおどね。」

というところで休憩の笛がなる。
女子たちが、またどやどやと今度はこちらにやってくる。

「おい、佐藤、ちょっと聞いてこいよ。」

「えっ?」

「次の試合の相手、どこのクラスなんか、あの背の高い子に聞いてこいよ。」

おい、お前、オレがどもるっていうこと、
クラスは違うけれどちゃんと知っとるやろ?
オレにそんなこと聞かせるなよ。

おまけによりによって一番可愛い子に・・・。

と思いましたが、友人の目はとにかく聞いてこいと強弁しています。

「つ、つ、つ、つつぎのし、し、試合は、どどこのクラスとやるの?」

つっかえてる時は、ほんのその瞬間、
時間が止まってしまったかのように長く感じる。

するとその子はにこっと愛想よく笑って、丁寧に教えてくれた。
クラスの女子の試合を、わざわざ放課後に見に来てくれたことへの
感謝の気持ちもあったのでしょう。

「佐藤、もうちょっと他にも何かきいてこいよ。」

えっ?お前な、もぷええ加減にしてくれよ。
でも、そうもいえない雰囲気。

「・・・・」

どんな話をしたのかはもう覚えてないけれど、
つっかえながらも何かを聞いて話した。

同じように愛想良い答えが返ってくる。

嬉しかった。

憧れのあの子とこんなにも話ができたということが、
本当に嬉しかった。

言葉にひっかかりながらの話。

そしてちゃんと言葉を返してくれる。

あれっ?

自分は今まで、
どもりを治してから、女の子と話をしようと思っていたが、

そんな必要まったく必要ないんじゃないの?

今のままの自分でそのまま行けばいいんじゃないのか!?

ということにうっすら気がついた。

私という存在。

誇りと自信を持っていけばいいんだ。

どもって話をしている私は、目を背けたくなる時もあるけど、

その私は間違いなく真実の私だが、
どもるということは、私の全てではない。

今思うに、もしあの友人が、始終私のそばにいて、吃音の私の背中を
しつこく押してくれていたら、まったく違った高校生活になった気がする。

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2011年9月4日 | コメント/トラックバック(0) |

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